女と女とうちの猫

老猫氏と暮らした記憶を残すためのブログ。今は若猫兄弟と暮らしています。

老猫氏が元気を取り戻してきた年始

ブログの更新が滞っていました。なんだか書きながら悲しくなってきてしまって。でも、また少しずつ書いていきたいと思います。

 

203年1月。老猫氏を拾ってから半年ほど。年末、体調の悪い時期は週に2回くらい病院に通って、ステロイドを飲ませたり、点滴をしたりしていた。このまま死んでしまうのではと泣いた日もあった。しかし、年があけてからは随分と回復し、食欲が安定した。この頃の日記を見返すと、病院が月1くらいの間隔にできそうと言われて喜んでいる。

この頃の写真も、今見返すとなんだか明るい。

老猫氏は老猫であるし体調も悪いので、おもちゃで遊んだりしないだろうと思っていた。しかし、やってみると案外遊ぶ。しかも長年外で暮らしてきたせいか、結構力が強い。ドスンと重たいパンチを繰り出してくる。これがかわいい。

老猫氏は元気が出てくると階段を登って最上階の寝室に行きたがる。仲良しなわけではないけれど、なんとなく先住猫たちと同じベッドの端で寝ていたりする日もあった。

元野良なのにほとんどお外に興味のない子ではあったが、この頃の写真を見ると、カーテンの向こうに顔を突っ込んで空を眺めているものもある。

活動範囲が広がり、食欲も安定して、ずっとビチビチだったうんちもたまには固いものが出るようになった。このまま体重がもっと増えてほしいと願った。

楽観的な私は、このままいけば、老猫氏を朝晩部屋に閉じ込めず、先住たちと同じ空間にいさせられるのではと思ったりもした。

しかし、老猫氏自身が、老猫氏部屋を気に入っているらしく、部屋に戻りたがらないということもなかった。

生活のペースができあがり、朝起きたら扉の向こうでニャーニャー言っている老猫氏におはよーと言い、ご飯をあげている間にトイレを片付けて、それから自分のご飯を作りながら先住猫たちを構う。老猫氏は腎臓が悪いせいで食事の後とても長く水を飲むから、自分の朝ごはんを食べ終わって、また先住猫たちを遊ばせて、それから老猫氏のところへ行くとちょうど良いタイミングだったりする。水でびちゃびちゃになった顎を拭いてあげながら、少し老猫氏を膝に乗せて撫で撫でして、それから仕事に行く。

朝は弱かったけれど、老猫氏のためなら早起きもつらくなかった。毎朝猫たちに癒されてから出勤して、帰ったらまた老猫氏が閉じた部屋の向こうでニャーニャー言っているのを開けて出して、しばらく膝に乗せる。老猫氏は少し飽きるとリビングに行きたがるから、一緒にリビングに行って、先住たちも含めてみんなで過ごす。幸せのルーティン。毎日、ずっと、これが続いてほしかった。

先住猫との関係と少しずつ悪くなる体調

正式に老猫氏が「うちの子」になってから初めての冬を迎える2022年12月頃。すっかり老猫氏は我が家に馴染み、やりたいように過ごしていた。

 

老猫氏の暮らしぶり

お迎えにあたって老猫氏の部屋を作ったのは前述の通り。

家の中でリビングは上の階、老猫氏の部屋は下の階にあった。先住猫と会わせてから、もし老猫氏がずっとリビングでいたいなら食事の時だけ老猫氏部屋を使うか?など色々と考えていたが、どうやら自分に与えられた部屋を気に入ってくれたらしい。

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リビングのソファでこうしてくつろいでいる時もあるけれど、しばらくすると、「下に戻りたいので開けてください」という感じで柵のところで待機していたりする。

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老猫氏は意思を人間に伝えるのが得意だ。こうしたいというのが先住猫たちよりはっきりとわかる。

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こうして人間にくっついたり膝に乗ったりするのも好きだけれど、十分くらい撫でられると「もう大丈夫です〜」とばかりに離れて行ってそこらにごろりとする。自分の部屋で熟睡していたはずなのにふと気づくと自分からリビングの手前の柵のところに来て「開けてください」と鳴いたりもする。

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この意思疎通ができる感じが可愛くて仕方がなかった。

 

先住猫との関係

先住猫たちとは、顔を合わせて暮らし始めはしたけれど、つかず離れずの関係を保っていた。

大体の距離感はこんな感じだ。

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近くにはいてもくっつくことはない。でも、先住猫二人とも、老猫氏のことはなんとなく気にしている。

人間よりも猫が好きな傾向のあるハチワレさんは特に積極的に老猫氏の匂いを嗅ぎに行くし時々近くに座ったりもする。この時期の動画を見返したら、ハチワレさんが匂いをしつこく嗅ぎすぎて老猫氏に叩かれているものがあった。本当はハチワレさんは仲良くしたかったんだと思う。でも、老猫氏は興味がなかったようだ。

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少しずつ悪くなる体調

寒くなるにつれて、老猫氏は少しずつご飯を食べなくなっていった。吐くことも増えた。時々は固いうんちも出ていたのに、ほとんど毎日下痢をするようになった。一時は4キロを超えた体術もすぐに3キロ台に戻り、骨が目立つようになった。体重が減ると体力も減るのか、鳴く声は掠れ、上階に上がってこようとする頻度も減った。

私たちはご飯を変え、病院に連れてゆき、懸命に看病した。

この頃、老猫氏は検査をするたび酷い貧血状態であることと、腎臓関連の数値が悪いことを言われていたと思う。吐き気止めを入れたり、点滴をすると数日はよくなるようだった。

病院の行き来で老猫氏を入れたキャリーケースがどんどん軽くなるのが悲しくて、帰宅すると膝に老猫氏を乗せたまましばらく動けなくなったりした。パートナーも、「冬を越せないかもしれない」と言って泣いた。

たまに先住猫と老猫氏がリビングにいるタイミングでおやつ用のカツオを開けると、先住猫たちは大喜びでがっつく。それを見ているうちに老猫氏も食べる気が起きるらしく、少しは食べようとする。何度かこの手を使って食べさせることができた。どうにかこうにか工夫して、食べたか食べなかったかで一喜一憂する日が続いた。

老猫氏のごはん事情(腎臓配慮ごはんのこと)

先日、#ペットを飼うこと のお題キャンペーンで優秀賞に選んでいただきました。ありがとうございます。

 

 

当日は驚きすぎて通知のメールを三度見くらいしてしまった。 老猫の良さが少しでも多くの人に知られるきっかけになったら嬉しい。お礼と言ってはなんですがかわいい老猫氏画像を載せておきます。

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ご飯を残すようになった老猫氏

さて、2022年10月に正式に老猫氏がうちの子になったあたりまで綴ってきた。このあたりのパートナーとのLINEのやりとりを遡ってみると、飼い始めたばかりの頃はなんでもかんでもガツガツ食べていた老猫氏が好き嫌いをしはじめた様子が見てとれる。

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この写真の前後のやりとりは「出かける前に要求鳴きをされたのでカリカリのご飯をあげたら全然食べない。ちゅーるをかけた部分だけ食べて、またもっとくれとニャーニャー言っている。なんてワガママ猫なんだ」という内容。(端に写っている老猫氏の足がかわいい)

この頃はまだ病気による食欲不審なのか単に舌が肥えて好みが出てきたのかわからなかったが、今振り返ってみると、病気の影響もあったのかもしれないと感じる。老猫氏は胃腸も悪かったし、腎臓病が進むと吐き気が出てご飯を食べられないことが多くなるらしい。人間でも調子が悪いけれどお腹が空いている時は、おかゆやおじやを食べたくなるから、老猫氏もトロトロの食べやすいご飯が食べたかったのかも。

 

そこで今日は、老猫氏のごはん事情について書いてみたい。

 

ベースのごはん

最初に獣医さんから勧められたご飯はこれ。低分子プロテインは、胃腸が弱いペットが消化しやすいものらしい。

同じロイヤルカナンのごはんではあったが、徐々に腎臓の値が悪くなるにつれて腎臓病猫用のごはんに移行した。

カリカリが食べられない時は同じロイカナのパウチにしていたが、前述の通り舌が超えてしまったのか食べられなかったのかはわからないが、徐々に固いフードを食べなくなってしまい、メインがパウチ、サブがカリカリになっていった。

でもやっぱり、パウチは高い。病院もかなりお金がかかったけど食費もなかなかに大変だった。

しかも、高いお金払っても食べないこともある。なので腎臓ケア用のごはんはかなりいろんなものを試したし、これを食べなかったらこっちを試し、としょっちゅう変えていた。

 

いろんなパウチ

イカナ以外に老猫氏が好きだったのはピュリナワンのパウチ。これは人間の目と鼻からしても、なんだか明らかに美味しそうだった。

 

 

とろとろのソースはかかっているものの、ある程度形のあるご飯なので、調子が悪いと食べられない。だがやはり味が好きなのか汁だけは舐めとって身がカピカピになって残されていることもしばしばだった。

ほかに比較的よく食べたのはこれ。

ペースト状で先に紹介したものよりさらにトロトロなので、食べやすかったんだろうと思う。

 

どうしても食べられない時はちゅーる

これまで紹介したものは腎臓ケア用のパウチが中心だが、カリカリのほうもあらゆるメーカーから出ているので何種類も試した。

獣医さんに腎臓病の時のご飯と通常のご飯は何が違うのかと聞いたら、リンの量が大きな違いだと教えてくれた。リンが入っている方が猫は美味しく感じるが、腎臓にはよくないらしい。

そんなわけで、ちゅーるの低リン低ナトリウムのものもよく使っていた。ごはんを食べなくなった老猫氏を病院に連れていくといつも獣医さんはシリンジにこれを詰めて強制給餌をしてくれていた。吐き出したりしないからこの子は素直だね〜などと言いながら。頑固な猫ちゃんだと吐き出したり、絶対に口を開けないように抵抗したりするらしい。

その頃はまだ知らなかったが、ちゅーるのメーカーであるいなば食品さんはハラスメント問題が最近報道されている。エシカル消費をできるだけ心がけたいと思っているのでできれば使いたくないのだけれど、老猫氏はこれしか食べられない時もあり、他の腎臓病猫ちゃんのためになればと紹介した。他社からも同様の商品がもっと出てきてほしいものだ。

老猫氏には使うことができなかったが、こんなものも用意していた。これはほぼ水状のごはんで、強制給餌用のシリンジをさして吸い取り、飲ませるタイプ。レビューを見るとやはり終末期の猫ちゃんにあげている人が多いようだ。一度開けてしまうとあまり保たないので消費期限には注意が必要。ご参考まで。

 

腎臓病のケア

腎臓病は長生きな猫はほとんどがかかるといっても過言ではないらしい。特効薬も開発中と聞いたが、残念ながらまだ市場には出回っていない。水をよく飲むようになったなどの兆候が見えたらぜひ早めに病院で健康診断をしてみてほしい。

こういった記事が腎臓病をもつ猫ちゃんの飼い主さんの参考に少しでもなれば嬉しい。

帰国、そして先住猫との対面

海外旅行から戻って

2022年10月半ば。一週間と少しの海外旅行を終えて帰国すると、老猫氏はすっかり保護猫カフェさんに馴染んでいた。

他の猫があまり好きではなく、近づきすぎるとパンチやシャーを繰り出すこともあったものの、人間に対してはとても人懐っこい彼は、良い子で店員さんをしていたらしい。人間の店員さんのあとをニャオニャオ言いながらついて回り、お客様からオヤツをもらったり撫でてもらったりして、なんとチェキまで撮ってもらっていた。短い期間しか預かってもらっていなかったのに、その後も亡くなるまで皆さん気にかけてくださって、ありがたい限りだった。

可愛がってくれたカフェのみなさんに感謝しながら連れ帰り、ようやく正式に老猫氏は「ウチの子」になった。

 

いざ、老猫氏部屋へ

老猫氏は、よく言えば適応能力が高く、悪く言えば無抵抗な猫なので、家に帰っても「ああハイハイまたここね」ぐらいの感じで普通に馴染んでいた。

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最初の数日は暮らしていた玄関に降りようとしたが、頭がいいのですぐに自分の部屋を理解し、その後は玄関に近づこうとしなくなった。

彼の部屋は玄関から一直線の先にあり、一応その手前にベビーガードをしていたのだが、宅急便の方が荷物を持って来る時などに時折ガードをかけ忘れることがあったとしても、自室の手前に優雅に座って微塵も外に出ようというそぶりを見せない。

野良猫だった彼が終生家の中で暮らすことを良しとしてくれたのだと思うと、なんだかホッとした。

 

先住猫のいるリビングへ

だが彼の部屋は元々物置部屋であり、人間の生活空間ではない。先住猫と腎臓病の老猫氏ではご飯が違うのでずっと先住猫と同じ空間で暮らさせるのは難しいが、人間好きの老猫氏をずっと一人の部屋に置いておくのもかわいそうな気がして、試しにリビングに連れてきて先住猫と顔合わせをすることにした。

最初老猫氏は階段を登るということも思いつかなかったようで与えられた部屋の中だけでおとなしく暮らしていたため、パートナーが抱いてリビングに連れてきてみる。

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すぐに、先住猫のうちのひとりの黒猫に遭遇する。黒猫は、恐る恐る近づいてきて、びくびくしながらも老猫氏の匂いを嗅ぐ。

老猫氏はというと完全に無関心である。匂いを少し嗅がれても自ら嗅ぐことはなく、興味を失ったように部屋を探検し始める。

そして、見つけた先住猫たちの水飲みに顔をつっこんですぐに水を飲み始めた。

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なんという度胸。なんというマイペース。年齢のなせるわざなのか、性格なのかわからないが、先住猫たちよりよほど堂々として、元々この家の猫だったかのように振る舞っている。安心といえば安心だが、今度は先住猫たちのほうがストレスを感じてはいないかと心配になってくる。

 

先住猫たち

先住猫たちは白黒ハチワレと黒猫の二匹。二匹は兄弟で、他の兄弟たちと共に幼い頃から保護猫カフェさんで暮らしていた。

かなりのビビり猫で、保護猫カフェ時代は壁の花になっているか猫たちと重なり合って眠っている期間が長かった。私は体格のいい猫が好きだったので彼らに惹かれて、じっくり関わりながら少しずつ遊んだり触れたりできるようになった。

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ハチワレさんの方を先に引き取ったがあまりにビビり度が高く、一年弱は触ることもできなかった。心配した保護主さんが黒猫氏も一緒に飼ってみてはどうかと提案してくれて、飼うことになった。黒猫氏は甘えん坊な性格だったので、彼が甘える様子をじっと観察していたハチワレさんはその真似をして甘えるようになった。今や、二匹ともすっかり甘えんボーイズと化している。

 

慣れられるのか

ハチワレさんは、以前から人間より猫が好きなタイプだったので老猫氏と一緒に暮らすのもきっと大丈夫だろうと思っていた。黒猫氏はどちらかというと猫より人間派で、いつもパートナーにベッタリなので少し心配だった。

リビングに来てお水を飲んだ後、すぐにくつろぎ出す老猫氏に対して、黒猫氏は意外と積極的に匂いを嗅ぎにいく。

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だが、どうやらしつこかったらしく、途中で起き上がった老猫氏にシャー!と言われながらドスン!と重たいパンチを喰らっていた。その時の黒猫氏の写真はさすがに撮れなかったが、「なにあの猫、怖い…!」と言わんばかりのなんとも情けない顔をしてビビり倒していた。

対してハチワレさんの方はなんだか距離の取り方がうまい。なんとなく老猫氏の近くに来て、ごろりとしながらじっと観察している。

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老猫氏はおじいちゃんなのでそのうちウトウトし始めたりして、いつのまにか二人で近くで寝ていたりする。かわいい。

ハチワレさんとはなんとなく仲良くやれそうな気はするが、黒猫氏との関係は未知数。そんな中、三匹と二人の生活が始まった。

 

 

海外旅行と老猫氏の部屋作り

さて、老猫氏をうちの子にすると決まったが、いくつか問題があった。

 

迫る海外旅行

実は老猫氏と出会う何ヶ月も前に、飼い主二人は海外旅行の計画を立てていた。

出会ってから十年と少し。女同士のカップルなので、結婚のような明確な区切りがない。けれど若いうちにウエディング写真を撮っておきたくて、春に二人で白いドレスを着た写真を撮っていた。f:id:kamoshidakaoru:20240907230052j:image

ネムーン的な意味も込めて秋には初の海外旅行をするつもりだった。行き先はヨーロッパ。もう航空券もホテルもとってしまっていた。

先住猫たちはごくごく健康体なので、不在の一週間の間はペットシッターさんに任せるつもりだった。だが、病身の老猫氏をペットシッターさんに任せるのは不安だった。

体調が刻々と変わる。元気な日もあればしんどそうな日もある。この頃の老猫氏は、健康体の先住猫2匹分をさらに倍にしたくらいの水を飲み、同じくらいのおしっこの量をして、週に何度かはビチビチの下痢をしていた。トイレ掃除は日に5回。しかし、ペットシッターさんに1日に何度も来てもらうわけにも行かない。

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保護猫カフェさんへの相談

そこで相談したのが先住猫たちがお世話になっていた保護猫カフェさんだった。記事にする許可をいただいていないのでここでは名前は伏せる。先住猫たちを譲渡していただく際に、私たちが女同士だが安定的な関係を続けているカップルであることは明かしていた。相談すると、旅行の事情にも理解を示してくれた。そして、一週間と少しの間、老猫氏を保護猫カフェの居候として受け入れてくれることになったのだ。

保護猫カフェペットホテルではないので、こういったことをお願いするのは大変に心苦しかった。実家などに頼れればよかったのだが、パートナーは両親が遠方に住んでいて、私はカミングアウトの末に実家とは疎遠になっていて難しかった。

保護猫カフェさんは老猫氏を保護した日の夜から相談しており、その後もずっと気にかけてくれていたから経緯があったために、快く受け入れてくれた。信頼できる方に預けられたことは、本当にありがたかった。

同性カップルはどうしてもカミングアウトしにくい環境であるが故に二人だけに閉じた関係になりがちだけれど、必要な時には勇気を持って周囲に打ち明けて、いざという時に頼り頼られることのできる関係を築いていくことも大事なのだなと改めて思わせられた。(助けていただくことが多いけれど、保護猫カフェさんで何か困ったことがあった時は、私たちも全力で支援したいと思っている。)

 

先住猫たちとの相性

考えねばならないことは他にもあった。旅行から帰ってきた後、老猫氏にどこで暮らしてもらうかという問題だ。

老猫氏は長く外で暮らしてきた猫だから、先住猫たちが受け入れてくれるかも、老猫氏が馴染もうと思ってくれるかも、わからなかった。相性が良かった時と悪かった時のどちらのパターンも想定しておきたい。

まずは、生活空間に老猫氏のためのケージを置くことを考えた。

しかし、都内の戸建ては、部屋数が十分にあるわけでもなく部屋自体も狭い。どの部屋にケージを置いても暮らしにくい。デカ猫かつ力の強い我が家の先住猫たちは、扉を閉じていても無理矢理開けてしまう。うちに来たばかりの頃、百均の部材で作ってた簡易ケージを破り自由に出歩いていた前科もある。またケージを破られて老猫氏が血気盛んな若猫たちに喧嘩を売られでもしたらどうしようと私たちは心配した。

そこで、先住猫たちは行かないように柵をした先にある、物置として使っていたサービスルームをなんとか片付けてエアコンを設置し老猫氏の部屋とすることに決めた。もし先住猫と会わせた結果、相性が悪くても、この部屋を逃げ場にすることができるだろう。

 

老猫氏部屋をつくる

ここから海外旅行までは忙しかった。サービスルームには物が床に直置きされていたので歩くのも一苦労だった。物を出したり寄せたりして場所を確保し、天井付近までの大きな棚を作ってものを収納した。

エアコンは安い時期に買えてよかったが、老猫氏を今玄関に住まわせているのが問題だった。エアコン業者が行き来する間、どこにいさせるべきか。間違ってでも再び外に出るようなことはあってはならない。そこで、保護猫カフェで預かってもらう期間中、つまり、海外旅行の前日か帰ってきてすぐのあたりで工事をしなければならないと考えた。そんなにピンポイントで工事業者さんが手配できるか不安だったが、なんとか工事日を確定させることができた。

そしてこんなに長期に不在にするのは初めてだったので、先住猫たちのためにもペットカメラを複数追加して、家の中のどこにいても様子がわかるようにした。

 

老猫氏、保護猫カフェ

そうして老猫氏を保護猫カフェさんに預けて、先住猫たちにはペットシッターさんを手配し、私たちは海外へと飛び立った。かなりあわただしい旅立ちだった。

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病院三昧、そして飼う決意

さて、一つ前に流れに沿わない記事を置いてしまったけれど、本来の記事に戻りたい。2022年の8月上旬に老猫氏を保護して、あちこち体が悪そうな気はしつつも、体重が軽すぎてワクチンも手術もお預けのまま1ヶ月が過ぎた。いくら各種検査が陰性だったとしてもワクチンが打てなければ、先住猫たちには会わせられない。可哀想な気はしつつも、体重を増やせるようにいろんなご飯をあげながら簡素な玄関の小屋で暮らしてもらっていた。

 

9月上旬、ようやく3キロ台だった体重が4キロに達し、ワクチンも、麻酔を入れての歯の治療もできることになった。この時までに、何度か顔に穴が空いて血が出るのを繰り返していたので、なるべく早いタイミングの手術を希望したが、まずはエコーなどでできる検査をしてから、ということで9月末ごろの手術となった。

 

この頃の写真を見ると、物凄く顔が歪んでへこみ、牙と舌が見えてしまっている。

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どれだけ拭いてやっても顔から血と膿が何度も出てくる。手のかかる猫を拾ってしまったとは思ったが、不思議と世話が嫌だとは思わなかった。

 

手術前のエコーによる検査に連れていくと、先生はこう言った。

「腎嚢胞がありますね。おしっこが多いのはこれが原因でしょう」

腎嚢胞とは、腎臓にできてしまう袋のようなものらしい。年齢とともに嚢胞は増えてゆき、腎臓の機能が低下して、最後は腎不全で死に至る子が多いという。

「それと、内視鏡しないとわかんないけど腸も普通とは違いますね。炎症を起こしてるみたい」

保護してからというもの、老猫氏は何度もとんでもない下痢をして、固いうんちが出ることの方が少なかった。環境が変わったことによるストレスかと思っていたが、何らかの病気の可能性もあるということだった。

「腎嚢胞は生まれつきのもので、よく頑張っている方だと思いますよ。まだお水飲めてるならすぐに亡くなるってことはないと思う。今の状態だと内視鏡するにもかなりの負担がかかるから、腸の方はステロイドで治療しながら様子を見ましょう。本格的に色々検査したら、次々悪いとこ見つかっちゃうかもね」

ひとまず抜歯の方への影響はなく、手術をすることは決まったが、私たちの心には先生に告げられた事実が重くのしかかっていた。

 

「本格的な治療するなら、飼わないと無理だよね」

「そもそもこんな病気だらけの大変な猫、譲渡先が見つかる気しないよ」

病院から帰って、パートナーとそんな話をした。実は先住猫が保護されていた保護猫カフェさんが、数ヶ月後であれば受け入れてもいいと言ってくれていた。だが、こんな状態の猫を受け入れてほしいというのも厚かましく思えたし、何より、この頃にはすっかり老猫氏への情がわいてしまっていた。長く生きられないとしても、最期まで気温の高い低いもなく、ご飯が自動的に出てくる環境で、安心して過ごさせてやりたい。

「うちで飼うしかないよ」

「私は君がいいなら、いいよ」

そんな会話を経て、ついに老猫氏は正式に我が家の猫になることになった。

 

歯の手術はうまくいった。左右で6本も歯を抜いたらしく、抜いた後の歯を見せてもらったらどれもボロボロに割れていた。これでご飯を食べるのはさぞ大変だっただろう。

顔も、まだ血は出ているが、形が左右対称に近づき随分と美猫になった。
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飼うと決まったなら尚更、ずっと玄関で暮らさせるわけにはいかない。私たちは、狭い家の中でもなんとか彼の居場所となる部屋を確保する算段をし始めた。

 

 

老猫を飼うということ

ここまでこのブログでは老猫氏との出会いから少しずつ過去を振り返ってきていた。

woman-woman-3cats.hatenablog.com

しかしせっかくお題に#ペットを飼うこと というのがあったので、「老猫を飼うということ」について思うことを書いてみたい。

 

 

「お迎えするなら子猫からがいい」って本当?

私の中には、老猫氏が家に来るまで「飼うなら子猫からがいい」という強固な思い込みがあった。

世の中の通説は実際にそうで、子猫のころの方が環境の変化に適応しやすい。性格もまだ流動的なので先住猫ともよい関係を築きやすい。それに、子猫は無条件に、誰が見ても可愛い。ころころとそこらを転げ回り、何にでも興味を示す。かと思えば電池が切れたように眠る。

動物も人間も、小さい頃が特別に可愛いというのは共通なんだと思う。それに、子猫のうちから一緒に暮らしていければ、20年にもわたる猫生を、長く一緒に過ごすことができる。

しかし、その思い込みは、老猫氏を保護してから変わった。

 

老猫だからこそ感じる「意志」

老猫は老猫らしい可愛さがある。自分自身というものがしっかり確立されているから、個体ごとにはっきりしっかり、個性がある。

老猫氏は、愛想の良さで餌をもらって生き抜いてきたタイプなのだと思う。警戒はするが、どんな人にもにゃーにゃーと擦り寄って甘える。距離感が近い。すぐに膝に乗る。でも、確固たる自分のペースがあるので、十分ほど膝で過ごすと「あ、もう大丈夫です」とばかりに自分の寝床に戻ってゆく。

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反面、猫には厳しい。まだ「出会い」部分しかブログでは紹介していないが、その後諸事情で一時期たくさんの猫と過ごしたり正式にうちの子になって先住猫に会ったりした時は、他の猫を無視するか、近づきすぎるとかなり重めのパンチを繰り出していた。「小童が!!」という声すら聞こえてきそうな激しめの対応をする。

そんなふうに、好きなもの、嫌いなものがきっぱりとあって、鳴き声や仕草から「こうしたい」というのが伝わってくる。

実家にいた頃も老猫と暮らしたことはあったけれど、その子は子猫のころから一緒に育って老猫になっていったから、特別に「老猫だから可愛い」と感じたことはなかった。ただ、その子も今思い返してみれば、年齢が上がるごとに特定の性格の傾向が強く出るようになっていった気がする。

人間では嫌がられがちな年齢特有の頑固さというやつなのかもしれないが、それが猫になった途端可愛くて仕方なくて、パートナーと私は老猫氏が家に来てから「意志がある〜!かわいい〜!」と毎日顔を蕩かせていた。

 

 

人間の生活に寄り添ってくれる老猫のペース

老齢になると猫は、寝ている時間や何をするでもなくじっとしている時間が多くなるが、やりたいことが多すぎる私たちにはそれも合っていた。作業をしていたり、本を読んだりしている間、なんとなくじっと同じ空間にいてくれる。たまに撫でると気持ちよさそうな顔をしたりお腹を出したりしてくれる。癒しとしか言うほかない。

たまたま老猫氏を迎えた頃がコロナ禍で、家で仕事をすることが多かったが、仕事にはほとんど支障がなかった。若猫たちが走り回ったり大喧嘩したりする中、老猫氏は基本的に静かに寝ていて、寂しくなると仕事中の膝に乗ってきてくれたりもする。

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人間の生活に寄り添ってくれる老猫の生きるペースって、すごくいいなと思った。

 

病院通いの日々

ただ、もちろん老猫を飼うのはいいことばかりではない。

老猫氏は腎臓病と謎の胃腸炎歯周病のトリプルコンボで、通院が欠かせなかった。長く間を開けられる時は3週開けていたが、調子が悪いと2日に1回は通院していた。動物病院が徒歩5分のところにあって本当によかった。

腎臓病と胃腸炎は特に大変だった。おしっこの量が多くて1日に5、6回トイレ掃除をしていたし、びちびちの下痢をしょっちゅうするので、トイレも老猫氏自身もたびたび丸洗いしないといけない。腎臓病が悪くなってくると、食事の工夫や点滴も必要だ。腎臓病にいいご飯って本当に値段が高い。それでも、高いご飯を体調や気分で食べないこともあって、ご飯にかける費用も大変だった。

私たちは、手をかければかけるほどその猫のことが可愛くなるタイプだったし、共働きである程度の収入があったので問題なかったが、覚悟なく老猫を保護してしまうときっと戸惑うと思う。老猫氏は大丈夫だったが、認知症のある猫ちゃんは、徘徊や夜鳴きもあるというし、だからといって世話をやめるわけにいかない。

 

幸せな老猫をもっと増やしたい

ただ、覚悟なく、ふいに病気を持った老猫を保護してしまった私たちでも、老猫のかわいさにやられて必死に世話をして、老猫の可愛さを知ったように、もっと老猫という選択肢も、猫をお迎えしたい人に知られていってほしいと思う。

以前ほかの記事でも書いたが、どうしても子猫以外の猫は、保護しても引き取られにくい。もらわれにくい猫は、どうしても外で最期まで生きてもらわなくてはならないことがある。保護団体さんにも、キャパというものがあるから、老猫1匹にかける労力を、若くてすぐにもらわれていく何匹もの子猫に充てる選択をするのは仕方がないことだと思う。

それでも私は、どうしても願ってしまう。老齢になって、外で生きていくにもしんどさが増す最後の数年くらいは、なんとか家の中でぬくぬくと過ごしてほしい。1匹でも多くの老猫が、あったかい場所で穏やかな晩年を過ごしてほしい。

例えば、人間も年齢が高くなればなるほど保護団体さんから猫をもらうのは難しくなる。猫は長いと20年以上生きるから、飼い主の方が早く亡くなってしまうような不幸なケースを減らすためだ。でも、それなら高齢の方と、数年しか一緒にいられないかもしれないけれど穏やかでゆっくりした老猫との相性はいいんじゃないかと思ったりもする。そういう方に、ぜひ老猫を迎える選択肢を考えてみてほしい。

私自身も、また老猫氏のような猫に出会ったら積極的に保護したいと思っている。可能なものかわからないけれど、いつか老猫を優先的に引き取るシェルターなんかもやれたら。本当にまだまだ先の夢だけれど、老猫氏と出会ってから、ずっとそんなことを考えている。

 

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